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No.900 ミシュラン1つ星レストラン Quince@San Francisco

お気に入りのレストランがまたひとつ。サンフランシスコのファインダイニング、イタリアンレストラン Quince

Quince


Quince のオーナーシェフである Michael Tusk 氏は、イタリア、フランスの数々のミシュラン・レストランで修行を積んできた人。中でも最も影響を受けたのが、北イタリア・ピエモンテ州バルバレスコ地方の郷土料理。その後ベイエリアに渡り、さらに Stars、Oliveto、Chez Panisse で経験を重ね、2003年秋にサンフランシスコの Pacific Heights に Quince をオープン。オープンするや否や国内外から大きな評価を得、翌2004年には様々な賞を獲得。2009年秋に現在の Jackson Square に移転。引き続き人々を惹きつけて止まない。

Quince


そんな訳で、ベイエリアで一番行ってみたいイタリアンのひとつだった Quince で友人と夫と3人でディナー。1907年に建てられたレンガと木製のビルをモダンに改装、天井高く広々とした空間で、ビジネス街のスタイリッシュな雰囲気が人々を魅了する。

Quince


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今回このレストランで一番印象に残っていること。それは、「ソムリエ」と「ワイン」。

ソムリエは、客に予算があるならば、それを上回るワインを勧めるべきではない、と私は思っている。それが、客とソムリエの信頼関係の第一歩。予算の範囲内で、注文した料理に合う最高の地域と最高の品種と最高のヴィンテージのワインを選ぶ。そんなソムリエがいるかどうかが、多少大げさだけどミシュランの星を分かつ大きなファクターのひとつになり得ると信じている。

そういう意味で、私たちについてくれたソムリエには感服だった。「50ドル程度で軽めの赤を1本と、100ドル程度でどっしりした赤を1本」という私たちの希望を聞くと、にこっと笑いセラーに戻っていく。値段も告げず、相談もされなかったので、どきどきしながら待っていると、2本の赤を運んできてくれた。

1本目のワインは、ピエモンテ州ランゲ(Langhe)地方のフレイザ(Freisa)という土着品種。2006年。酸味があり個性的な赤ワイン。2本目はウンブリア州の Sagrantino di Montefalco DOCGのサグランティーノ(Sagrantino)種。2007年。一度だけ飲んだことのあるこの品種は大好きだったので嬉しいチョイス。色が濃くタンニンがしっかりしたオールドワールドらしい重厚な1本で、ビンテージより熟成感を感じられる。値段は、45ドルと105ドル。わ、ぴったり。対照的な2本は料理にもよくあって大満足。対応も終始好印象。

2006 Cavallotto "Bricco Boschis" Langhe Freisa 2007 Raina Sagrantino di Montefalco


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お料理。テイスティングメニュー(コースメニュー)は95ドル。今回はそこまで気合の入ったディナーではなかったので、アラカルトで、前菜2品、パスタ3品、メイン1品を3人でシェア。こういうフレキシブルな注文にも快く対応。


Heirloom Tomato Gazpacho ガスパッチョ
アミューズは、今が旬のエアルームトマトを使ったガスパチョ。青臭さも酸味も抑えられ、トマト嫌いの夫が「美味しい」と楽しめたまろやかな冷製スープ。

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Fresh Run Farm Squash Blossom ズッキーニフラワーのフリット
burrata and ricotta cheese with cherry tomato and black coco bean
一度作ってみたくてまだ食べたことがなかったズッキーニフラワーのフリットを発見。(ズッキーニの花って食べられるのです。)衣にしっかり味がついていてサクサク、お花の中に詰められたブッラータチーズとリコッタチーズがとろ~り溶け出し、美味しい!今回1、2を争うヒット。

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Local Halibut Crudo ハリバットのクルード
grapefruit, cherry tomato and sea salt
クルードは鮮魚のカルパッチョのようなお料理。不思議な味のソース。創作性は面白いけれど、生魚はどうしても日本人感覚で評価してしまう、、よね。

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Senatore Cappelli Spaghetti クラムとメロンとエスプレッソのスパゲティ
Manila clams, melon, and espresso
クラムにメロンにエスプレッソ?と興味深い組み合わせ、店員さんの一押しで注文。Quince のパスタの中で、この Senatore Cappelli 粉で作られたスパゲティだけがイタリアからの輸入乾麺。(その他は自家製生パスタだそう。)うん!完璧なアルデンテ。パスタだけで食べるとしょっぱいな、、と思ったら、メロンと一緒に口に運ぶと甘さと塩分が相まってなんとも絶妙な味に。ぱらぱらっとかかっているエスプレッソの粉が時折ふわっと香る。

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Pici Toscani 煮込みラム肉のパスタ
lamb ragú and pecorino cheese
Pici(ピチ)は、水と小麦粉と塩だけで作られるトスカーナのパスタ。コシが強く、どちらかというとうどん風。私は玉子麺が好きなのでそこはお好み。ソースはラムのラグー。ラグーといういとこってりミートソース系を想像するけれど、ここのはさらっとあっさりで珍しい。ラムの臭みもなく、上品な旨味が主張。

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Agnolotti dal Plin アニョロッティ・ダル・プリン
traditional piedmontese filled pasta
Agnolotti dal Plin(アニョロッティ・ダル・プリン)は、ピエモンテの名物パスタで小さなラビオリの一種。私にはちょっと肉臭かったけれど、肉々しいのが好きな夫は美味しい、と。(個人的にはオークランドのOlivetoで食べた絶品アニョロッティ・ダル・プリンが忘れられないのだけれど。)

Quince


Paine Farm Squab ひな鳥のグリル、フォアグラ添え
savoy cabbage, foie gras, turnip and aceto balsamico tradizionale
今回一番印象に残っているのがこのひな鳥。普段コース料理で肉料理ってそれほど感動しないだけになおさら。ソノマの Paine Farm のひな鳥は、驚くほど柔らかく、かつ弾力もあり味がある。素晴らしい素材に絶妙な焼き加減。シンプルゆえに技が光る一品。添えられたキャベツはベーコンと共に炒められていて、美味しすぎて独り占め。

Quince


食後は、こうしたレストランでは欠かせないチーズプレート。(うちでは通称 "チー盛り"。)運ばれてきてきたワゴンには20種類近くのチーズがずらり。お勧めを聞きながら、大好きなゴートチーズ、ピエモンテ産のソフトチーズ、ドイツのブルーチーズ、ハーブに覆われたコルシカ島のチーズ、タバコの葉で包んで熟成させたチーズ、クセの強いウォッシュチーズなど6種類を選ぶ。この選ぶ作業がまた楽しい!(ただし Quince のチーズセレクションはいずれもかなりマニアックな味。。)「今日のチーズのリストはありますか?」と聞くと、「選んだ6種類を書き出して差し上げますよ」と、忙しい中でも心づくしのサービス。

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最後はお口直しのプチフール。バター香るフィナンシェ、上品なガトーショコラ。小さいながらも手抜きなしの逸品。

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パスタはいずれも20ドル、ひな鳥は34ドル、チーズは1種類6ドル。量と値段の比率を考えるとそこはやはり高級ファインダイニング。でもソムリエ含め、最初から最後まで完璧なサービス。レストランへの対価は、単に空腹を満たすためだけでなく、極上のサービスによって日常から解き放たれ、最高に贅沢な気分になれる、その対価を含むべきである。そんな信念を徹底したレストラン。

お見事。

Quince
http://www.quincerestaurant.com/
470 Pacific Avenue
San Francisco, CA 94133
by shina_pooh_at_sfo | 2010-09-15 16:50 | レストラン


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